働き方改革で有給休暇が義務化?⑤育休時や退職時の扱い

第一回はこちら↓

事務局
ちょっと気になったんですけど、育休中の社員にも有給は付与されますよね?
周藤弁護士
されますね。
事務局
ということは5日の消化義務は出てきますよね?
周藤弁護士
勤務年数にもよりますが、可能性はありますね。
事務局
それは育休とは別に5日になるんですよね?
周藤弁護士
「有給として5日」なので育休とは別です。以前に触れましたね。
事務局
と、なるとですよ。有給付与されてから364日後に育休復帰してきた場合って、あと1日しかないからもう5日の有給は取れませんよね?
事務局
こうなると5日の有給を取らせなかったことになって罰せられますよね?
事務局
これをうまく利用すれば会社を潰せてしまう・・・!!
周藤弁護士
いや勝手に潰さないで。そのケースみたいに、そもそも不可能な場合はセーフです。日数が足りないケースは退職時もそうなので、併せて考えてみますか。

育休・産休からの復帰の場合

事務局
先ほど話していたケースの場合ですね。

可能な限りの有給休暇を取得させれば良い

条文上は最低5日の有給を取得してもらう必要があります。厚生労働省も同じ見解に立っています。一方で、復帰した日から次の有給付与まで4日しかないのに5日の有給を取らせることは出来ませんので、このようにそもそも不可能である場合には、違法にはならないとされています。ただ、4日あるのであればその4日間は有給を取らせる必要があるでしょう。

復帰の時期についての話し合いと同時に、復帰後の有給取得についてもあらかじめ話し合っておいた方が良いと思われます。

事務局
復帰してすぐ有給休暇も気まずいかもしれませんし、「育休→有給5日→復帰」みたいな形で育休にくっつければ良いんですかね。
周藤弁護士
本来は育休であるはずの日を有給にするなどでなければ、そのような形でも良いかと思います。

自主退職の場合

先ほどの育休や産休と異なるのは、次の有給付与を待たずに退職日が到来する可能性があることです。ただ、条文上は「1年未満の期間が生じた場合はその期間に与えなければならない」と書かれているので、退職予定者の場合にも5日以上の有給を取得させる必要があります。

もっとも退職予定者の場合は、有給を消化しきってから退職することも多く、原則として一定期間(例えば2週間)を置いて退職するので、あまり問題になるケースはないと思われます。

一方で即時退職(即日)の場合は、そもそも有給を利用できる日が存在しませんので、有給を5日取得させる義務は発生しないものと思われます。

解雇の場合

解雇予告と有給休暇のかねあい

解雇予告手当を支払えば解雇日を言渡し日にできることから、解雇予告手当さえ支払えば良いようにも考えられます。

私としては、「有給を5日指定した上で、残りの日数分について解雇予告手当を支払う」という進め方が法律上無難な気がしております。もっとも、解雇予告手当で計算する方が1日あたりの賃金が有利になる可能性もあるので、紛争予防の観点からはどちらか有利な方で計算する方が望ましいでしょう。

即時解雇の場合は有給休暇を取得させる必要はない

即時解雇の場合、理屈上は有給を取得させる義務はないと考えられます。

もちろん即時解雇が適法であることは絶対条件ですが、従来も「有給日数にかかわらず即時解雇しても良い」とされてきたことを考えれば(場合によっては解雇予告手当も不支給)実際上も取得させる義務まではないものと思われます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です